今日の味噌汁は里芋と長ネギにした。
私は結婚するまでほとんど里芋とは縁がなかった。じゃがいも圏出身なので、何に入れるにもじゃがいもだった。味噌汁はもちろん鍋にだって入る。すき焼きに入れた時は、旦那に驚かれた。「ほとんど肉じゃがじゃん」と。
そんなことを言うなら、肉じゃがはご馳走になるぞと思ったりもしたが。

結婚して中部に嫁いだら当たり前のように赤味噌圏だった。まず名物が、味噌カツ、味噌煮込みうどん、どて煮。真っ茶っちゃ。赤味噌をつかってなくても、手羽先にあんかけスパ(これも不思議と茶色っぽい)やっぱり真っ茶っちゃだ。
外食だけの話ではなく、一般家庭でも赤味噌は使われる。姑は赤味噌とお砂糖、みりんを煮詰めたいわゆる「甘味噌」が大好きでこれさえあればご飯がいくらでも食べられるという。

結婚してすぐに私は豚汁の作り方を姑にならった。故郷の豚汁は作れたが旦那の実家の豚汁はもちろん赤味噌で、何か作り方に劇的な違いがあるかもと思ったからだ。
結果として、作り方に差はなかった。赤味噌に変えるだけだった。しかし、具が違った。じゃがいもは入らない、里芋を入れるのだ。姑のこだわりは里芋は絶対に生のもの…冷凍なんぞはNGらしい。ましてや、じゃがいもなんて出番はなく、スーパーでじゃがいもを買おうとしたらたいそう驚かれたものだ。
姑の作る豚汁は甘くて美味しい。旦那の食いつきが明らかに違う。同じ作り方をしているのになぜだろう、不思議だ。

家庭でのいつもの味噌汁は結婚当初は気を使って赤味噌で作っていた。しかし私の舌では正解がわからない。美味しければ良いのだろうが…やはりよくわからないのだ。
結婚をして1年も経つ頃には、我が家の味噌汁は赤味噌と白味噌の特製合わせ味噌に姿を変えた。
お互いのマックス折衷案だ。

折衷案を取り入れてから、さらに月日が流れたが最近気がついたことは、赤味噌にはじゃがいもが全く合わないということ。そして逆に、白味噌には里芋が全く合わないということだ。それぞれ試してみたのだがお互いに異物感が満載で、箸が進まなかった。なるほど、通りでじゃがいもの出番が少ない訳だ。
なので里芋の日は赤味噌100%にするし、逆も然りだ。

赤味噌にすっかり慣れた私だが妊娠中悪阻がひどく、食生活が乱れた時がある。食べたくないものは想像しただけで吐き気を催すくらいだった。

ソファに横になりながらふと思った、豚汁が食べたいと。もうそうなったら、豚汁一色だ。なにがなんでも食べたい。
私は重い体をひきずって、セブンイレブンに向かった。パウチの具沢山の豚汁を買った。やった!帰ったらすぐに食べよう。
帰宅してレンジで温めて…いざ、と言う時…赤味噌だった。そうか、ここは赤味噌圏。セブンイレブンでさえも取り込まれているのだ。しかしその時の体は故郷の慣れ親しんだ豚汁しか受け付けられなかった。
ふざけんなよ!なんで豚汁まで赤味噌なんだよ!普通、白味噌だろ!そう思いながら少しだけつまんだ…。しょっぱかった。

赤味噌圏に嫁いだと認識させられた出来事である。
忘れられない。

今我が家の冷凍庫には冷凍の里芋が鎮座している。生を使うのはもうやめた。こちらでできた友達が、冷凍で十分だといったのだ。ちなみに味噌汁も毎日作らないらしい。だから赤味噌もそこまで好きじゃないと、同世代の友達は言う。
そう言われるといつか赤味噌文化も消えてしまうのだろうかと思う。それはそれで寂しいものだ。
我が家は折衷案で赤味噌が生き残っているが、たまには味噌汁以外も練習してみようかなと思った。