今年のお正月、久々に両親と会って決めたことがひとつある。それは、「親より先に絶対死なない」ということだ、一年前、胃ガンになり胃袋を全適した父は、回復が遅く、今は33キロしかない。一日のほとんどを布団の中で過ごし、トイレに立ち上がるのもかなりのパワーを使い、終わったら疲れきってまた布団の中に入ってしまう。私がそろそろ帰ると言ったときも、布団の中から力なく手を振った。実家の玄関を出て、すぐに泣けてきた。入院中も見舞いの帰り、病院を出るまで我慢して、入り口を出てすぐに涙が出た。泣きながらナゼだか中島みゆきの「化粧」が頭の中でかかる。何故だろう、全然歌詞の内容と私の置かれている状況は違うのに、いつも前奏部分のエレキが大音量で流れるのだ。そして頭の中でかかる「化粧を」聞きながら思ったのだ、「親より先に絶対死なない」と。そしてお正月が終わって、ずっと気になっていた婦人科クリニックの予約を取った。もう五年くらい生理不順を放っておいているのだ。年齢的なこともあるし、この年齢の女の人は皆そんなもんだろうと思っていたし。だけど万一ガンとか思い病気だったら…それで私の方が先に両親より死んでしまったら…あんなに弱っている父を悲しませてはいけない…そんな事を思いながら私はあの婦人科の検診用のイスに下半身裸で座り、股をうんと広げた。女性の先生のクリニックにして本当に良かった。その場で「ここにポリープがあるので今とってしまいます」と明るく言われ、そして子宮がん検診も終了。検診結果は二週間後と言われ、クリニックを出たら、本当に、本当に疲れていた。だけど何だかよく分からない達成感がどこからか湧いてきた。クリニックのあのイスに座る前と後で目の前の世界が全然違って見える気がする。あのイスに座って、やっとオトナになれた気がしたのだ。まだ夕方の四時代だったけど、一人で蕎麦屋に入って酒を飲んだ。検査の後、「入浴はシャワー位にしておいてさっと済ませるように」とは言われたけど、「酒を飲むな」とは言われなかったし。その時の酒がうまかったことと言ったら。二週間後の検査結果はがんもなし、更年期の心配もまだなし。そしてポリープをとって不正出血もぱったりなくなってしまい、つまり私は元気なおばさんなのだ。このまま元気に生きるのだ!そして親より先に絶対死なない!自分の健康管理をすることが最大の親孝行、と言う訳だ。